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九十九の杜(つくものもり)

西ノ宮 佳代

2012.04.25 [wed] - 05.26 [sat]

 *429()~56()は連休

営業:13:00-19:00  休廊:日・祝・火曜


モザイクを立体として作る西ノ宮佳代。古代の技法を現代に生かし、日本古来の歴史も参照しつつ、石やガラス、貝などの欠片を素材に、作家の内なる理想郷-蓬萊郷(ほうらいきょう)を制作しています。

出雲に取材した鏡の大作「境界-願」や落語から着想した猫だるま「幾代大夫」など藝大博士課程修了制作を含む新作 を展覧します。 出品作は、立体、レリーフなど10数点。

 



九十九の宝と宝の杜

長い年月を経て古くなったもの、愛情を与えられた依り代には魂が宿り九十九神となる。日本の古い伝承です。「百鬼夜行絵図」には、お椀や柄杓、傘などといった身近な物の姿で九十九神(つくもがみ)が登場します。

無数の物、あらゆるものという意である九十九という言葉は、私の多種多様な素材や幅広く用いる表象と重なります。作品に埋め込まれた石や貝殻、陶器やガラス、アクセサリーなどといった九十九の素材は、幼い頃から収集を続けてきた私の大切な宝物です。部屋の装飾として常に傍に置き、大切に保管し続けてきたこれらの宝物は、魂を宿し九十九神となっているのではないかと感じます。

私は制作のため神話や伝承の舞台、歴史のある建物、観光地などへ取材に出掛け、そこで体験してきた自分の物語を作品の源泉としています。今回の作品群は、出雲大社や厳島神社などを訪れた体験をもとにしました。出雲では巨大な注連縄が掲げられた境内や朝焼けに輝く稲佐の浜といった神話の舞台に自ら立ち、神聖で厳かな空気を感じました。厳島神社では挙式に遭遇し、その儀式の様子や豪華な装いの新郎新婦の姿から、幼い頃から憧れていた絵本の中の幻想的な物語を目の前にしているかのように感じました。自ら体験した出来事や、訪れた場で出会った表象と、それらによって呼び起こされた私の物語とが結びついた時、作品のイメージが生まれます。こうして、九十九の素材、九十九の宝によって作られた空間は、私にとって神聖な場となるのです。

私は内的世界の姿として「蓬莱郷(ほうらいきょう)」という理想の空間を創造しました。その中に存在する宝の杜(もり)を「九十九の杜」と名付けます。

西ノ宮 佳代 (にしのみや・かよ)